イベント報告

  • 2026.09.17
  • 北信越ブロック

北信越ブロック研修会(日程2026.8.18-19)文責:不破 大仁

龍馬プロジェクト北信越ブロック研修会

兼 第200回 龍馬プロジェクト役員会 開催報告

開催日:令和8年(2026年)8月18日(火)・19日(水)

開催地:石川県金沢市

テーマ 「原点回帰 ~未来の種はすでに地域に~」

8月18日・19日の2日間、石川県金沢市において「龍馬プロジェクト北信越ブロック研修会」ならびに「第200回 龍馬プロジェクト役員会」を開催しました。

日本はしばしば「資源のない国」と言われます。しかし、本当にそうでしょうか。

地下資源やエネルギー資源だけを見れば、確かに海外に依存している部分は少なくありません。一方で、長い年月をかけて積み重ねてきた「時間の蓄積」という視点に立てば、日本の地域には世界に誇るべき多くの財産が眠っています。

古いものを壊して新しいものへ置き換える「スクラップ&ビルド」だけではなく、先人から受け継いだものに現代の知恵を重ね、新しい価値を生み出していく。長い歴史の中で培われてきた文化や伝統。

大学や研究機関が蓄積してきた「知」。地域に根差した事業者による挑戦。それらはすべて、これからの日本をつくる「未来の種」になり得ます。

今回の研修会では、「地域にある価値を見つける」「その価値を事業として活かす」「そこに新しい知を加え、未来の産業へ育てる」という流れの中で、金沢・北陸が持つ可能性について学びました。

【8月18日(火)】研修① 13:00~15:00

「地域の価値を見つめ直す」

― 文化・観光・まちづくり ―

講師:丸谷 耕太 先生 金沢大学 准教授

最初の研修では、伝統工芸、観光まちづくり、文化的景観、コミュニティ・デザインなどの観点から、地域そのものが持つ価値について学びました。金沢には、工芸や町家、用水、寺社、茶屋街など、長い歴史の中で形づくられてきた独自の景観や文化があります。

重要なのは、それらを単に「古いもの」として保存するのではなく、

「なぜ先人たちは、この地域をこのようにつくり上げたのか」という背景まで読み解くことです。

そこに、その土地にしかない物語が生まれます。

地域の歴史や文化、工芸、暮らしが残っていること自体が観光資源となり、その土地を訪れなければ得られない「体験」へとつながっていく。

そして、一度訪れて終わる観光から、その地域を好きになり、再び訪れ、応援してくれる「ファン」を生み出す観光へ。新しい観光資源をゼロからつくるのではなく、地域に既に存在している価値を見つめ直すこと。まさに今回のテーマである「原点回帰」を象徴する研修となりました。

研修② 15:30~17:00 「地域資源を実際の事業へ活かす」

― コミュニティビジネス・宿泊 ―

講師:林 俊伍 様 株式会社こみんぐる 代表取締役

続いて、金沢で古民家を活用した宿泊事業「旅音」などを展開する林俊伍氏から、地域資源を実際のビジネスへとつなげる取組について学びました。その姿は、イタリア発祥の「アルベルゴ・ディフーゾ」を彷彿とさせます。一つの大きなホテルの中ですべてを完結させるのではなく、地域に点在する古民家などを宿泊施設として活用し、宿泊者が地域を歩き、地域の店を利用し、住民と同じ町の空気を感じる。

「町そのものを宿として捉える」という発想です。

しかし、こうした民泊・宿泊事業は地域住民の理解なくして成立しません。

全国的に民泊をめぐる騒音、ごみ、地域住民との摩擦などが課題となる中、利益だけを優先する市場原理に委ねるのではなく、地域と共存するためのルールを整えることの重要性についても伺いました。

そして印象的だったのが、「古民家は、日本の伝統文化のショールームでもある」という視点です。

柱、梁、建具、畳、庭、器、地域の食。

一軒の古民家には、日本人が長い年月をかけて培ってきた暮らしの知恵と美意識が凝縮されています。

古民家を残し、そこに新たな価値を与え、事業として持続可能にすることは、単なる空き家対策ではありません。それは、地域の文化を次代へ残し、「日本そのものを活かす」ことにつながる。

そんな可能性を感じさせる研修となりました。

17:15~18:15 第200回 龍馬プロジェクト役員会

研修終了後、第200回となる龍馬プロジェクト役員会を開催しました。

全国各地から集まったメンバーにより、それぞれの地域の現状や今後の活動について意見を交わしました。

18:30~ 懇親会

役員会終了後は懇親会を開催。

地域や立場を越えて交流を深め、各地域での取組や課題について活発な情報交換が行われました。

【8月19日(水)】

研修③ 9:00~10:30 「未来の種を育てる」

― スタートアップ・産学官連携 ―

講師:内田 史彦 先生 JAIST 学長補佐・特任教授
TeSH(Tech Startup HOKURIKU)プログラム代表

2日目は、北陸の大学・研究機関が持つ「知」を、どのように新しい産業へつなげていくのかを学びました。これまで北陸は、東京や大阪などの大都市圏と比較すると、スタートアップの事例が決して多い地域ではありませんでした。しかし北陸は、もともとものづくり産業が盛んな地域です。

さらに、大学、高等専門学校をはじめとする教育・研究機関が集積し、多くの研究成果や技術が蓄積されています。つまり、「未来の種がない」のではなく、「種を事業へ育てる仕組み」が十分ではなかった。その状況を変えようとしているのが、TeSH(Tech Startup HOKURIKU)の取組です。

2024年から本格的に動き始め、大学などが持つ研究成果や技術を事業化へつなげる取組が進められ、既に会社設立に至った事例も複数生まれています。

世界のユニコーン企業を見ても、その成長を支えているものの一つが、多数の特許や独自技術です。

その背景には、長年の研究によって蓄積された「学」と「知」があります。

研究成果を研究室の中だけに留めるのではなく、社会へ送り出し、企業やベンチャーキャピタル、行政などと結びつけ、事業として成長させていく。TeSHは、そのための土壌を北陸につくろうとする取組です。地域に眠っている「社会を変える原石」を見つけ、磨き、産業として世に送り出していく。

その仕組みの実態をご紹介いただき、「日本には、まだまだ希望がある。」そう強く感じる時間となりました。

10:30~

振り返り・閉会式

2日間の研修を振り返り、北信越ブロック研修会を閉会しました。

今回の3つの研修は、一見すると、

文化・観光・まちづくり 古民家・宿泊・コミュニティビジネス スタートアップ・産学官連携

という異なる分野の話に見えます。しかし、そこには一本の共通した考え方がありました。

それは、「地域には、既に未来をつくる材料がある」ということです。

先人が残してくれた町並みや文化。地域に根付いてきた暮らしや産業。大学や研究機関に蓄積された知識と技術。そして、それらを次の時代へつなごうと挑戦する人々。

これらを「古いから壊す」「地方だから何もない」と考えるのではなく、価値を見つけ、現代に合う形へ磨き直し、事業や産業へとつなげていく。

スクラップ&ビルドから、蓄積された時間と叡智を活かす地域づくりへ。

人口減少時代を迎える日本において、これは北陸だけの話ではなく、全国の地域に共通する重要な視点ではないでしょうか。

「原点回帰 ~未来の種はすでに地域に~」

今回の研修で得た学びをそれぞれの地域へ持ち帰り、その土地に眠る「未来の種」を見つけ、育てていく。それこそが、地域から日本の未来をつくる一歩になると感じた2日間となりました。

文責:龍馬プロジェクト北信越ブロック長 不破 大仁