2025年11月26日、衆議院議員会館において、慶應義塾大学SFC研究所 上席所員の金子光(かねこ・みつや)先生を講師としてお招きし、「東京一極集中の是正と地域活性化の未来」をテーマとした勉強会を開催いたしました。
本勉強会では、日本が直面する人口減少・少子化・地域衰退という構造的課題について、多角的に分析するとともに、国家としてどのようなグランドデザインを描くべきかを学ぶ貴重な機会となりました。


1.東京一極集中のメリットとデメリット
金子先生からは、東京一極集中がもたらす経済的合理性と、それによる地域格差拡大という二面性について、明確に整理してご説明いただきました。
人材・企業・情報・資本が集積することでイノベーションが生まれやすい
一方で、地方から若年層が流出し、地域経済・コミュニティが弱体化する
特に、「足による投票(Tiebout仮説)」の視点から、都市間競争が避けられない構造にあること、また地方創生を進めようとするほど逆説的に東京への集積圧力が強まるというジレンマについて解説がありました。
2.地方活性化と少子化対策のジレンマ
地方創生の議論は、少子化の問題と密接に結びついています。
先生からは、日本社会が抱える以下の課題が、相互に関係しながら悪循環に陥っている点に言及がありました。
社会保障費の増大による財政赤字
少子高齢化の加速
経済的不安や住宅問題による未婚・晩婚化
地方における仕事不足・人口流出
特に印象深いのは、「少子化の根本要因は経済的理由だけでは説明できない」という指摘です。
医療の発達・価値観の変化・女性の教育水準向上と社会進出・職場文化など、複数の構造的要因が絡み合って出生率の低下を生み出しているという分析が示されました。

3.国家戦略の欠如と縦割り行政の限界
歴史的な比較を交えながら、日本の行政組織が抱える縦割り構造の問題についてもご説明いただきました。
省庁が独立しており横断的な戦略機能が弱い
異質性や偶然性を排除しがちな官僚組織の特性
これによりグランドデザイン(国家としての長期戦略)が不在になりやすい
高市内閣における人口戦略本部の動きについても、縦割りの延長線上にある指示に留まり、真に統合的な戦略にはなり得ていないという現状が示されました。
4.少子化の根本要因の整理
先生の講義では、少子化の原因が次の三つに収斂することを改めて学びました。
子どもを持つ合理性の低下
− 子どもが労働力ではなくコストになった
個人の自由度の上昇
− 結婚も子どもも「必須」ではなくなった
雇用・将来への不安定化
− 長時間労働・非正規雇用の増加・住宅費高騰
これらが組み合わさり、長期的な人口減少を止められない構造が生まれていることを痛感しました。

5.求められるグランドデザイン
勉強会の最後には、地方創生と人口戦略を両立させる上で必要な視点として、
省庁横断のマネジメント強化
都市と地方が補完し合うネットワーク型国家
イノベーションを生む「多様性」の確保
生き方の多様性を前提にした人口政策など、国家レベルでの新たな戦略の必要性が強調されました。
おわりに
今回の勉強会は、人口減少と地方衰退という日本が直面する極めて本質的な課題を、歴史・経済・社会構造の視点から深く学ぶ機会となりました。

金子先生のご講義を通じて、
「地方創生」と「人口戦略」はともに国家の未来を左右する根幹政策であり、縦割りを超えた統合的なグランドデザインが不可欠である
という認識を共有することができたと感じております。
今後も龍馬プロジェクト全国会として、国家の将来を見据えた政策研究と議論を重ね、より良い社会の実現に向けて活動を進めてまいります。
文責:龍馬プロジェクト 関東ブロック長 松本 博明
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