龍馬プロジェクトでは全国から会長以下14名の有志で、8月24日(火)~ 8月26日(木) の3日間の日程で台湾視察研修を行いました。今回の投稿はその視察報告です。
<1日目 8月24日(火) (報告者 南出賢一)>
17時~
台湾研修の初日である8月24日は17時から、台湾独立建国連盟の黄昭堂主席と羅福全先生からお話を頂きました。以下に要旨を記します。
歴史的にみても日本と台湾は運命共同体である。日清戦争後、台湾が日本の統治下になったことが、台湾に近代化をもたらした。 鉄道インフラ整備等はもちろんのこと、最も大きな要因は教育政策である。(1つの大学区に22の中学校、 そして1つの中学校区に200の小学校)しかし、デモクラシーや近代化は日米に比べ約30年遅れているとのことである。 台湾近代化プロセスに中国は全く関係ない。そして、中国は政治態度からしても、デモクラシーはまだまだ先であろう。
日本における近代化のプロセスは明治維新を皮切りに、教育制度による人的資本を形成したことが大きな要因であったが、 戦後にはじまったデモクラシーにおいては欧米比べるとまだまだ未成熟である。政治における野党の与党攻撃のあり方などを見ていると、 真摯に議論するという姿勢にまだまだ日本は欠けていると感じる。
日本人はプライドを持つべきである。アメリカの力が弱まってくる中で、日本は憲法改正により普通国家となるべきだ。 小泉政権時代のPKOによりインド洋への海上自衛隊派遣で、再軍備だと非難したのは中国と韓国だけで、 他のアジアの各国でそのような発言はなかった。中国や韓国に臆することなく、憲法改正、そして教育により人的資本を再構築し、 国や歴史に誇りを持たないと、中国が経済・軍備的にも台頭してくる情勢の中でアジアにおけるバランスをとることが困難になってくる。
現在中国は海洋での影響力も強めようとしており、台湾については経済的統合をはじめとして政治的にも統合を目指している。 いわゆる台湾の中国化である。台湾が中国化してしまうと、おそらく台湾東岸に中国潜水艦の基地ができ、 日本の生命線とも言われるシーレーンでの障害が予想される。
今後の可能性を秘めたアフリカにおける資源争奪戦も激化しているが、中国の影響力が強まり、日本のポジションが低い位置にある。
これまで、台湾を中国の一部と承認していないのは、日本だけでなくアメリカにおいても同じスタンスである。 日台関係の構築とアメリカとの協力関係が、互いの国、アジアの安定に寄与する。若い世代を育て友好の懸け橋になりたい。
19時~
民進党の国際部の若手スタッフも交えての懇親会。台湾の郷土料理である客家料理を頂きました。 龍馬プロジェクトの台湾における取り組みが今後はじまるかもしれません。
21時~
研修参加メンバー懇親会、ならびに元葛飾区議の鈴木烈さんと飲食店オーナーを交えての意見交換会。
<2日目 8月25日(水)前半 (報告者 上島俊範)>
1. 台湾団結連盟主席との会談 党本部(9:25~10:45)
黄昆輝主席より、主に最近台湾政府が中国政府との間で締結した両岸経済協力枠組み協議(ECFA, Economic Cooperation Framework Agreement)という経済協定に反対する立場からお話を頂きました。
台連(台湾団結連盟)は台湾を主権国家であると主張しており、 日米を軸に中国から自立してアジア太平洋地域の安定と発展を推進するべきあると考え、 日台の関係はその文脈で大変重要であると黄主席は位置づけています。黄主席によると、中国からの自立というテーマを考える上で、 今年締結されたECFAは、その実質は自由貿易協定であるにも拘らず、 通常二国間で結ばれるFTAという形をとらなかったことが最大の問題であるとのことでした。中国、台湾ともにWTO(世界貿易機関) 加盟国であるにも関わらず、あくまでも国内の地域間協定として結ばれたECFAは、台湾の独立性を弱めて「1つの中国」を支持し、 中国への経済依存を一層深める結果になると黄主席は危惧されていました。
ECFAの締結自体問題視されるべきことではありますが、 この世論を二分するような重要な条約を世論の明確な支持を経ずに現政府が進めてしまったという方法論にも問題があったと黄主席は主張されています。 20万人超の署名を集めて国民投票の提案を行ったものの、残念ながら国民党が圧倒的多数を占める議会、 政府側の反対により今日に至るまで実現していないそうです。政治的な側面もさることながら、 WTOのガバナンスが利かない国内協定という形態で自由貿易を進めることは、一部の大企業に少しの利益と、 多くの一般大衆特に中間所得層から最下層に不利益をもたらす結果となり、台湾の発展には繋がらないと黄主席は力説されていました。
また、この会合には現在選挙活動中の若手地方議員候補者にも出席頂き、懇親を深めることができました。
2. 台湾市日本商工会理事との会談 市内レストラン(10:00~13:00)
商工会からは岸本様、北島様、山本様の3名の方々のご出席を頂き、商工会、及び台湾のご紹介を行っていただいた後、 龍馬プロジェクトメンバーからの質問に答えていただくという形の意見交換を行いました。
台湾政府は台湾が経済においてアジアのハブとなり、 投資の窓口となるよう政策を推し進めているとのことでした。具体的には法人税の減税(25%→17%)、相続税の10%への減税、 ASEANとのFTA締結交渉等の施策などが挙げられます。日本企業にとっては、直接中国本土へ進出するよりも、一旦台湾を経由し、 台湾の企業と組んで中国へ進出するという方法が非常に効果的であるという指摘もありました。
意見交換の席ではテーマは多岐に渡りましたが、日本政府への要望として、日本として国家戦略を持ち通商政策を立て、 企業の海外進出を後押しすべきという意見がでました。近年、日本企業の熟練工が他のアジアの企業に引き抜かれている事例を出し、 「日本は自分の技術を安売りしすぎている」という指摘がありました。また、政治家にはTOPセールスマンとして日本企業、 特に自力での海外進出が難しい中小企業のサポートを行い、国際競争を支援すべきという見解も伺いました。
また、教育問題についても触れ、「自分の頭で考え、自分の言葉で自分の意見を言える度胸」が必要というご意見を頂きました。 日本でも外国人の採用が増えてきているように、人材は国際競争の時代に入っており、 アジアの勢いのある優秀な人材と日々触れ合いビジネスの世界でしのぎを削っている商工会の方々ならではの問題意識を伺うことができました。
<2日目 8月25日(水)後半 (報告者 冨安正直)>
台湾研修2日目の午後3時からは、いよいよ李登輝元総統の講義及び懇談会です。
台北市日本工商会の方々との懇談を終え、バスに乗り込み台北市内を出発。一路、李登輝元総統のオフィスがある淡水まで。 40分ほどバスに揺られた後、今回の台湾研修の手配をしていただいている「日本李登輝友の会」の台湾在住スタッフの早川友久氏より、 もうすぐ到着しますとのアナウンス。街の様子を見ていると、突然警察の方が目立ち始め、パトカーも多くなり、 なんだか物々しい雰囲気になってきました。「今日は何かあるの?」と早川氏に尋ねたところ、「李登輝氏の警備だろう。」とのこと。 当然ですが、李登輝元総統はやはりいまでもVIPだということを改めて感じるとともに、 これからこの物々しい警備の対象である方が我々の目の前でお話しいただけることへの期待が高まります。
李登輝元総統のオフィスがあるビルは30階建て。その29階と30階に李登輝元総統が主宰するシンクタンク「群策会」があります。 今日は30階の会議室で講義をいただけるとのことでしたが、我々の到着が30分ほど早過ぎたため、 図書室を借りて竜馬プロジェクトの即席役員会を開催。沖縄の地方統一選挙への対応などを協議し、ちょうど議事が終わったころに秘書の方に 「準備が出来ましたのでどうぞ」との案内をいただき会議室へ。
会議室というよりは、閣議や首脳会談に使うような広い部屋の上座に2つソファが並べてあり、 それを取り囲むように人数分のソファが置いてあります。早川氏より「この(上座の)席には神谷代表がおかけください。 隣には総統がかけられます。その他はご自由に」との案内があり、私は李登輝元総統のお顔がよく見える近い位置に座らせていただきました。 全員緊張しながら待つこと数分、「ようこそいらっしゃいました」との言葉と共ににこやかに李登輝元総統が登場!もちろん全員起立にてお迎え。 参加者全員の1人1人に「どちらから来られましたか?」「ようこそいらっしゃいました」と丁寧な御挨拶と握手をいただきました。 私自身としては、これだけでも台湾に来たかいがあったと感動しておりましたが、 神谷会長より元総統に我々竜馬プロジェクトの趣旨と今回の台湾訪問に対する思いが語られ、李登輝元総統より 「今日は皆さんとお会いすることを本当に楽しみにして参りました。あなた方のような若い方が、 ぜひ日本のリーダとして将来活躍していただきたい」とのお言葉をいただくに至り、 期待にこたえるべく気合を入れていかねばならないと改めて姿勢を正しました。元総統は事前に我々の資料に目を通していただいていたようで、 「あなた方のような将来の日本の指導者たる若者のために何が必要か、私の思いを今日はお話しします」と前置きされたうえで、 自分が坂本竜馬のファンであること、台湾での竜馬会が最近発足し自分が名誉会長であること、竜馬が幕末の日本に何をもたらしたのか、 現在にどのように影響したのかを語られ、現在の日本にこそ竜馬が必要であること、そのためにリーダーシップ論として「李登輝の思想と実践」 という東京外語大の井尻教授の論文や御自身の著書や講演の原稿などを引用しながら、組織のリーダーとしての在り方、 政策を実現するための戦略戦術などを1時間にわたりお話しいただいきました。その中で「一番大事なこと」と言っておられたのは、 「私は私で無い私」であるということでした。
公のために私を捨て去ること、日本的哲学、武士道にこそ学ぶべきであると。
武士道の価値を見失っている、私を含めた多くの日本人にとってそれは大切で必要で、そして何より非常に困難なものだろう。しかし、 ここにその武士道精神を体現されている英雄、誇りと共に「私は帝国陸軍少尉でありました。」 と語る台湾の偉大な政治的指導者を目の前にしながら直にこのような言葉をいただくことを不思議な感動と共に聞いておりました。
講義はあっという間に終了、質疑応答に入ると秘書さんがソワソワしながら「もう次のお客さんが来て待っています。」とおっしゃいます。
そういえば、すでに予定の時間を過ぎています。しかし、李登輝元総統は「良いから待ってもらいなさい。はい、次の質問はどなた?」 と我々との交流を楽しんでくれている様子。恐縮しながら質問を続けさせていただき、気付けばさらに1時間が経過。 始まってから2時間半以上が経過しています。さすがにヤバいと感じたか、秘書さんに促されたのか、進行役の南出副代表から「李登輝先生、 そろそろ締めさせていただいてよろしいでしょうか。」とのとりなしで締めの挨拶ということで私に指名いただきました。私からは 「中国共産党の横暴を牽制するためにも、 アメリカに頼らない自立的な日本を築いた上で我々が台湾と協力し合うことでアジアと世界の平和と安定を築くことが出来るはずで、 そのことを戦略に置きながら我々は台湾との交流を今後も続けていきたいですし、今後とも我々に是非ご指導をいただくようお願い申し上げます。 」と締めさせていただきました。
最後は1人1人と握手のうえ、2ショットの写真を全員と撮っていただき、全員大興奮。夢のような2時間30分 (写真撮影の時間を含めるともっとか?)はあっという間に終わりました。
李登輝元総統は今年87歳の御年ですが、オーラというか存在感というかバイタリティーというか、圧倒されっぱなしでした。 そして終始感じる温かさは、日本と私達「竜馬プロジェクト」への期待の大きさであることを肌で感じつつ台北への帰路に就いたのでした。
2024.10.09
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